アッシュとスマイル。 -------------------- ユーリの城に設けられた練習用の防音室。 今日は音合わせをしようと俺とスマイルと二人で使っていて今は休憩時間。 城主のユーリは別室で歌詞の修正中。 スマイルは昔から愛用しているらしいギターを弾いている。 「あっ!今のメロディー良くない!?メモメモ!!」 バサバサっと目の前の五線譜とペンを引き寄せて音符を書き込んでいく。 暫くギターを弾いてはメモを取るのを繰り返していたかと思うとくるりと此方を振り返り、 「アッシュ君!ちょっと聴いて聴いて!」 うふふ〜と今にも歌いだしそうなほど機嫌良く近付いてきた。 俺の前まで来て床に座り込むとギターを抱え直す。 どうやら今思い付いたメロディーを聴かせてくれるらしい。 こうやってギターを持たせると次から次へと音を生み出すのだから、全く驚かされる。 さらにその音楽が普段のこの人からは想像も出来ないような美しく繊細な音だったりして…。 (絶対皆ユーリの作曲だと思ってるッス…) 実はDeuilの曲は殆どこの人が形にしている。 勿論それぞれが考えた曲を出し合ったり一緒に編曲したりメンバー全員で作っているのだけど、その中でも彼の 意見が採用されることが多い。 あとリーダーとしてメディアに出ていく事が多いユーリとソロの活動をさせてもらっている俺に対してスマイル はあまりメディアにも出て行かず個人の仕事もそこそこ、結果的にバンドの裏方の作業を一番多く引き受けている。 決して任せっきりではないし、スマイルもこまめに相談の連絡をくれる。 「ねね、どうかな!?」 「…………俺、本当…スマイルの創る音、好きッス。Deuilに入れて、貴方と一緒に音楽が出来て幸せですよ。」 「………。」 鳩が豆鉄砲食らったような顔とはこの事かというくらい目を真ん丸にして固まっているスマイル。 ……何かおかしな事を言っただろうか…。 ぶはっ 「!?」 「あっはははは!」 此方は大真面目だったのだが突然爆笑された。 「あははっ、ちょ……アッシュ君てば〜!プロポーズでもされちゃうのかと思ったよ!!」 ヒーッヒッヒッヒッ!と独自の笑い声と共にギターを抱えながらそのまま仰向けで床にひっくり返ってしまった。 プロポーズだなんて予想外の言葉に狼狽えて体温が上がってしまった気がする。 「俺は真面目に言ったんですが…。」 「全くホント真面目すぎですヨ。大袈裟だなあ〜。」 まだ笑いが収まらないのか両腕で顔を覆ったまま、ヒッヒッヒッ…と声を立てている。 「……スマイル、服汚れちゃいますよ?ユーリが見たら何て言うか…。」 「うん〜……。」 床に転がったままのスマイルを起こそうと立ち上がり、スマイルの足を跨ぐ形で正面に立った。 「ほら、スマ。起きるッスよ。」 「むー…」 唸りながら片手を此方に伸ばしてきたので全く仕方ねぇなこの人はと思いながらまだ顔を覆ったままのもう片方 の腕も一緒に掴んでぐいーっと引っ張り起こしてやる。 「ふふ。アリガトね、アッシュ君。」 ジュワッチ!と何処ぞのヒーローよろしくぴょんっと飛び跳ね立ち上がるとくるっと背を向け、練習ー練習ーっ。 とベースを取りに向かった。 掴んだ腕が何時ものそれより温度が高かったような気がして、 (もしかして、照れてたんスかね…) -------------------- ……い、いや。アッスマではない。断じて。…多分。 バンド事情捏造もいいとこです。スマイル贔屓過ぎて怒られそう。 スマイルは時々楽曲提供とかしてそうだけど、基本的にはDeuilのベースとしての仕事が殆どかなあ…と思いまして。 あまり自分から他へ手を広げようとはしないかな、と。 サイトの傾向として基本スマイルがヒーローです。良いとこ総取りです。 あ、作曲のしかたなんてさっぱりわかりませんすみません。 アッシュが仲間外れで可哀想かなと思って書いてみたんですが…。 アッシュは密かにスマイルのファンだったりしてね、なんて思いながら書いたらアッシュがスマイル好きすぎた。 ちょっとしたこだわりは、どの設定でも共通してアッシュだけがスマって呼ぶこと。 (もしかするとユーリさんが呼ぶことがたまにあるかもですが…) これには別に深い意味はなくて…笑 ただ、他の人達はスマイルって呼びそうだなあ…と。 御幸の中ではスマって呼んでも違和感がなかったのがアッシュだけだったというだけ。